【図書カフェだより】第四回飛鳥文学賞:大賞および各賞発表!

Library Cafeについて

飛鳥シャードにあるLibrary Cafeは、ウルティマオンラインのプレイヤー作家が書いた本(PC本)やNPC本の収集・公開を行っている図書館カフェです。Library Cafe本館)、Annex(別館)、Neo(新館)の3つの図書館に分けて収蔵されたたくさんの本たちをどなたでも読むことができます。

 

現在の収蔵している4345冊の本たちの詳細は収蔵図書リスト(2023年6月28日現在)をご覧ください(追記:書架番号を新しくしたことにともない、2023年6月27日にリストを更新しました)。またSA本の収蔵状況についてはこちらをご覧ください。

 

Library Cafe本館にはルナゲート近くのFreeSpaceAsukaさんからハウス間テレポーターでお越しいただくのが便利です。また本館・別館・新館の各館はテレポーターで相互に結ばれており、簡単に行き来することができます。詳しくはLibrary Cafeへの行き方をご覧ください。

 

Twitterでも本のご寄贈など日々のLibrary Cafeの様子をご紹介しています。あわせてご覧くださいませ。


第四回飛鳥文学賞の各賞が発表されました

6月9日のBBNNでおよび飛鳥ベスパー雑記で第四回飛鳥文学賞の各賞受賞作が発表されました。また6月10日には授賞式が開催されました。そこで今回は大賞および各賞の結果をあらすじに審査員選評をつけてご紹介いたします。

 

 

くっちゃねさんが今年も飛鳥文学賞の様子を素敵なイラストにしてくださいました。Library Cafe別館の展示会場で作業する私と、それを螺旋階段の上から見守ってくださっているGrenさんとにわやぎさん。あたりを動き回っているのは本の精霊ですね。ありがとうございます。

 

 

 


【大賞】Gren作「Chain(鎖) 第2版」

駆け出しのワンダリングヒーラーの青年は、ある時、森の中でひとりの女性の幽霊を蘇生しました。屈託のない女性に誘われるまま、トリンシックにほど近い彼女の家へと招かれます。意気投合したふたりでしたが・・・。ブリタニアの人々の生と死の意味を問う物語、待望の第2版です。

 

審査員選評(OUT:飛鳥文学賞実行委員会委員長)

「死」は、UOにおいて逃れられぬ鎖錠の如きテーマである。ブリタニアでは「蘇生」が可能であるがゆえに、我々は何度となく死に、蘇り、また死ぬことになるが、それは即ち我々が、この地に囚われているからだという見方もできる――ならば我々を縛りつけるその鎖の正体とは、一体何なのか。本作は、幾人もの人生を繋ぎ合わせつつその重さを丹念に描き、ブリタニアならではの苦悩と、そこからの「解放」を、大きなドラマとして提示する。表現力と完成度も申し分なく、審査員達からの推薦も多かった本作が、第四回の大賞に選ばれた。

 

【佳作】Ruku作「Britannia Atlas(ブリタニアの地名案内)」

ブリタニア各地の名所が記された本格的な地誌です。水域、島々、土地、山々、峡谷の各章に、合わせて59か所の名所が紹介されています。地名や座標だけでなく、その場所にまつわる逸話にも触れられているほか、巻末には解説と伝承もまとめられているなど、読み応え十分の内容です。

 

審査員選評(OUT:飛鳥文学賞実行委員会委員長)

ガイドブック的体裁の本作が、「文学賞」に取り上げられることには異論もあるかも知れない。しかしこれほど丁寧な作りで、且つ情景が目に浮かぶ本というのは類も少なく、ブリタニアという地の広がりと奥行きを実感させてくれるのは間違いない。そこに物語を感じるならば、本書もまた、一冊の文学と言えるのではないだろうか。

 

【佳作】Nibhoshi作「The bar where she was(彼女のいた店)」

酒場の跡地にたたずむ女性の物語です。めぼしいアイテムは持ち去られ、残されたがらくたが消滅しても、彼女はひとり目の前の木をじっと見つめています。木の幹に下げられた古びたサインプレート。それが風に吹かれて「パタン」と音を立てた瞬間、彼女の記憶は過去へと遡行します。

 

審査員選評(OUT:飛鳥文学賞実行委員会委員長)

諸行無常の記録。だが単に切ないだけではなく、そこに確かにあった賑わいや、人々の思いが、「彼女」を通して我々の心にも伝わってくる。これこそがUOであり、我々の暮らしているブリタニアなのだと、強く感じた。

 

 

【短編賞】Zain作「hedi the headless」

hediは街の鼻つまみ者。手当たり次第に女に声をかけては罵られ、蔑まれ、挙句の果てにガードを呼ばれる始末。それでもhediはへこたれずにヘラヘラ笑っていました。けれどもそある日、声をかけた女に叫ばれ、男たちに叩きのめされたhediはついに・・・。短いながら恐ろしいお話です。

 

審査員選評(OUT:飛鳥文学賞実行委員会委員長)

これほど後味の悪いUO本は、今まで読んだことがない。正直な話、万人に勧めることはできない一冊である。だが、紛れもない傑作だろう。私にとっては今回応募された全33作品の中で、最も印象に焼き付き、また忘れえぬ物語である。凄まじい読後感。

 

 

【BBNN賞】Kryten作「In-Ort-Lem(強化する人)」

シーフ。かつては悪の花形職業として人気でしたが、世界の法則の変容によりいつしか「終わっている」と言われる職業になっていました。そんな時代遅れのシーフの男が、悪態をつきながらフェルッカの銀行にリコールします。誰もいないと思ったそこにはガーゴイルの女がいて・・・。

 

審査員選評(OUT:飛鳥文学賞実行委員会委員長)

ワイが求めてやまぬ女ガーゴイルの姿が、ここに描かれているのである。デカくて、カタコトで、誠実。これは好きになってしまう。主人公であるシーフの、等身大の姿も憎めない。ある意味ありふれた出来事しか描かれていないし、大きな事件も起こらないが、だからこそ続きが読みたくなった。ええやん…!

 

 

【ベスパー賞】Pepper Corn作「Awakened Men(目覚めちまった奴ら)」

ブリテインの酒場キャッツレアの住み込み従業員、ペッパー・コーン。彼は酒場の雑用をこなしながら、休みの日には近くの港で釣りをして暮らしていました。ある日、港から酒場に戻る途中のペッパー・コーンに一人の男が話しかけてきます。どうやら人を探している様子の彼は・・・。

 

審査員選評(BUNZO:飛鳥ベスパー首長)

ブリタニアで暮らしているとふとした拍子で自分の為すべき事、愛すべきものに目覚めることがあると思います。自分の道を追い求めつつ、他の者の道を安易に卑下せずに称え合う。ブリタニアンのあるべき姿が垣間見えた作品でした。 ちなみにわしも長い旅路(プレイ)の果てに孫のかわいさに「目覚め」ました。そして爺&孫で常に称え合っています! 孫&爺は今日もなかよし!

 

 

【ユー賞】Gren作「Dragon Lantern」

身寄りのない少年クロムは、打ち捨てられた廃屋で古びたランタンを拾いました。火をつけた瞬間あたりが暗くなり・・・。今年4月に上演された舞台(動画はこちらこちら)のノベライズ作品です。本編に加えて作中の登場人物が遺した研究ノート「魂の研究」も収録されています。

 

 

審査員選評(MAYUTA:飛鳥ユー首長)

もともと黒熊亭劇場で演劇していたDragon Lanternの小説版です。事前に演劇を見ていましたので内容はしっていましたが、演劇だけではわからない情景や心理心情が伝わってきて、よりこの作品の奥深さを感じ、もっと好きになりました。小説版を読んだ後に、また演劇版に還ってくると完全版Dragon Lanternになります(笑) また、登場人物が残したとされる書物が読めるのは小説版だけで、作者さんの作る物語の世界観を感じる事ができます。

 

【大樹の木漏れ日賞】Snow-Spider作「HELLO」

大きくあくびする野良の黒猫の目の前を、美しいネコが通りかかります。きれいにそろった艶やかな赤い毛並みの彼女にすっかりのぼせ上った彼はさっそく声をかけました。「helloお嬢さん、かわいいね」 そんな彼を睨みつけそっぽを向く赤ネコ。けれども黒猫はめげません。そして・・・。

 

 

審査員選評(HOLLY-BELL)

2匹の猫の出会いの物語。見る人によってはペットとテイマーとの主従関係についてハッとさせられる方もいるかもしれません。2匹の幸せな未来を願うとともに、どこか考えさせられる部分も含んだ一冊でした。

 

 

【森の動物賞】Gren作「Knights of Rabbit(うさぎの騎士)」

畑に刺された緑の棘は、地下に住む「私」の巣穴まで続く大きな穴を開けました。びっくりしてあわてて外に飛び出した「私」を待ちかまえていたのは、斧をかまえた屈強な戦士。最近流行りのうさぎ狩りであることを理解し、観念した「私」でしたが、不思議な人影があらわれて・・・。

 

 

審査員選評(FALF)

うさぎかわいい……うさぎ……! いやほんとこんなイベントやってくれたらなあ! ついでにハロ衣装も来たりして、うさぎ騎士になれたら……なれたら……!! そんな感じで、読むとうさぎの可愛さに発狂できる素敵な作品でした。 ちょっとメサンナ! Cat Shit Oneの英語吹き替え版とか見ませんか!!?

 

 

The seeker of danger賞Ruku作「Britannia Atlas(ブリタニアの地名案内)」

ブリタニア各地の名所が記された本格的な地誌です。水域、島々、土地、山々、峡谷の各章に、合わせて59か所の名所が紹介されています。地名や座標だけでなく、その場所にまつわる逸話にも触れられているほか、巻末には解説と伝承もまとめられているなど、読み応え十分の内容です。

 

 

審査員選評(BOUKEN YAROU)

なんか知らねえが、文学?とやらの賞を出さなきゃいけねえらしい。オレは普段本とか読まねえけどよォ。読むんだったら、やっぱり神経がヒリつくような、読んだだけで血が滾ってきて、冒険せずにはいられなくなる読書体験をしたいぜ! ということで、選んだのはこの作品だ。あっちこっちへと出かけたくなるガイドブックって感じで素晴らしかったぜ。

 

 

【Library Cafe賞】Niwayagi & mike作「Yagi Hanko Book」

にわやぎさんオリジナルの顔文字「やぎ文字」の魅力がつまった3巻本です。1巻目は本書を書くにいたった動機とやぎ文字の解説。2巻目は本作のメインとなるやぎ文字の一覧、3巻目はその対訳となっています。飛鳥文学賞史上初めての共著にしてコラボレーション・アート作品です。

 

 

審査員選評(Latour:Library Cafe司書)

独自のやぎ文字を考案しコミュニケーションされているにわやぎさん。そんなやぎ文字の素晴らしさをブリタニア中に伝えようと考えられたミケさん。お二人の存在無くしてこの作品は生まれませんでした。本作は単なる書籍という枠組みを超えた、まさにコラボレーションアートです。

 

 

読者賞の行方は?

今回は感想文も史上最多となる266本が寄せられました(多過ぎて表彰式会場の本棚に収まりきらず、あわてて追加しました)。感想文を書いてくださった皆さまありがとうございました。いただいた感想文をもとに、読者をワクワクさせ、感動させた5つの作品を「読者賞」に選ばせていただきました。

 

 

【読者賞】Sawako作「憧れの味を求めて~ミアの食材探訪記(Ⅰ&Ⅱ)」

ミアの夢は立派な料理人になること。元宮廷料理人が書いたというレシピブックに載っている料理をどうしても作ってみたくなった彼女は食材調達の旅に出ますが・・・。20ページ本2冊組の本ですが、1冊目と2冊目でまったく種類の本になっています。ぜひ読んで確かめてくださいね。

 

【読者の声】「一巻でミアの食材探求の冒険が始まるんだな!! と思わせておいて二巻が飯テロという斬新さ!」「不覚にもゴクリとお腹が減りました」「シェリーのチーズケーキは図書館カフェで売り出してほしいです」「この物語はほんの序章。若いミアにとっても、人生の本の序章なのです。」

 

【読者賞】Gren作「The Criminal Bookstore(咎人書店)」

フェルッカにある「咎人書店」。犯罪者相手に本を商うその店は、本業のほかに「あるもの」に関する裏の依頼も引き受けています。そこに新たな依頼者が・・・。主人公のフーリエとクゥエルを中心に、一癖も二癖もあるキャラたちが活躍する、痛快なビブリオ・ピカレスク小説です。

 

【読者の声】「フェルッカという罪を犯した者が行く世界を舞台とした物語りに引き込まれました!」「ダンディズムあり、剣劇あり、しかもミステリー仕立てという、UO小説の決定版みたいなお話です」「断然面白かった作品です」「シリーズ物として続きも書かれるとのことで、楽しみにしています!」

 

【読者賞】Makoto作「執着」

ブリテイン近郊の森にひっそりとたたずむ、石づくりの小さな家。そこが彼の世界の全てです。住んでいるのは、ただひたすらに、ひたむきに、武器だけを打ち続ける一人の男。そう、彼は鍛冶師。そんな彼の武骨でストイックな男の生き様が、抑制されたストイックな筆致で描かれます。

 

【読者の声】「凄くストイックで、それでいて『よく斬れる』ことにのみ魂を注ぎ込んだ刀工のような、どこか狂気じみた鍛冶師のお話でした」「少ない台詞からも読み取れるほどキャラクターの造詣が巧みに感じました」「独特の間があり、職人の独特の世界観とその頑固さをうまく表していると思いました」

 

【読者賞】nanaochan作「蓋」

絵を描くことにはまっているというGrenにモデルを頼まれたキャプテン・ジョーダンは黒熊亭を訪れました。でも店内には誰もおらず静まり返っています。酒を飲んで待っていようとカウンターに入った彼は一冊の本を見つけました。何の気なしにページをめくるジョーダンでしたが・・・。

 

【読者の声】「ホラー!!!ホラーだ!!!!」「すばらしい!没入感すごい!」「読んでいくにつれてどんどん不穏になっていって、怖かったです」「読めば読むほど自分の中のガラス玉が濁っていくような深い沼の底に行くような感じがしました」「夜に一人で読んだの後悔しました・・・><」

 

【読者賞】Lia the stitcher作「Whoever you are(あなたが誰でも…。)」

「水を汲ませてくれないか」茅葺き屋根の家で家畜たちと暮らす女性のもとにやってきた旅人。水を汲む男の横顔が疲れて見えたのでパンを差し出すと、男お礼を言い、彼女にブレスレットを渡して去っていきいました。ゆるやかな時の流れの中で、ふたりは逢瀬を重ねていきます・・・。

 

【読者の声】「まるで映画のような、旅人との素敵な恋の物語でした」「詩情あふれる語り口で、幻想的な世界観を味わいました」「非常に穏やかな時の流れを感じる作品でした」「牧歌的な雰囲気をとても感じれたのが良かったです」「麦の葉、そして穂というのは季節の変化を表しているのですね」

 

応募作品は肖像画コンテスト終了まで展示いたします

応募作品は6月30日まで展示する予定でしたが、6月半ばに第六回ベスパー肖像画コンテストのお題のひとつが「飛鳥文学賞の応募作品」となったため、展示期間を肖像画コンテスト終了まで延長することにしました。その後、本館別館新館の各書架に作者別に収蔵させていただきます。

 

作家さんのイベントが終わり、次は画家さんたちのイベント。ブリタニアからますます目が離せません。どうぞ引き続き、よきブリタニアライフを!

 

 


今回もお読みいただきありがとうありがとうございました。ぜひ飛鳥の図書館Library Cafeにいらしてくださいね。また桜の図書館NewMagincia Petrushka Library、出雲の図書館Magincia Library、大和の図書館bibliomania瑞穂の図書館Jhelom Tactics Libraryをよろしくお願いいたします。

 

(C) Electronic Arts Inc. Electronic Arts, EA, EA GAMES, the EA GAMES logo, Ultima, the UO logo and Britannia are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. in the U.S. and/or other countries. All rights reserved.

Profile

Latour
Latour
Latour(ラトゥール)と申します。みなさんには「ラー」あるいは「司書」と呼んでいただいています。
飛鳥の図書館カフェ「Library Cafe」で司書をしているかたわら、私自身も作家活動も行っています。
本業は「人間も動物も治療できる専業ヒーラー」だったのですが、最近は冒険に出かけることもほとんどなくなり、図書館にこもってばかりいます。
プロフィール画像はPicrewの「こんぺいとう**メーカー」で作成しました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です