第一回飛鳥文学賞:大賞および各賞発表!

Library Cafeについて

飛鳥シャードにあるLibrary Cafeは、Ultima Onlineの作家さんが書いた本(PC本)を中心に収集・公開を行っている図書館カフェです。本館にはPC本を、すぐ南東にある別館にはNPC本を、合計1350冊の本を収蔵しております。現在の収蔵図書の詳細は最新の記事をご覧ください。

 

Library CafeLibrary Cafe Annexへの行き方はこちらをご覧くださいませ。

 


第一回飛鳥文学賞贈賞

第一回飛鳥文学賞の結果が、主催者の飛鳥ベスパー首長様OUTさんのブログ飛鳥ベスパー雑記で発表されました。また6月12日には贈賞式が開かれました。今回は各賞の受賞作品を、あらすじ、審査員講評、贈賞式の模様とともに紹介させていただきます。

 

なお、私は贈賞式を欠席してしまったので(代わりに等身大パネル(?)を立てていただきました)、審査員のおひとりである飛鳥ユー首長様HOLLY-BELLさんのYouTubeの動画から、お許しを得て画像を使用させていただきます。

 


【大賞】HidokuKurai SORA作「Engraved with you」

フェルッカに店をかまえる鍛冶屋Torus。ある日彼は、店に侵入してきたPK、Revolveにナイフを突きつけられます。観念したTorusでしたが、Revolveの反応は意外なものでした。このナイフの作り主を探している、と。ナイフの精巧な造りに魅せられたTorusは、人探しの協力を申し出ますが。

 

審査員選評(飛鳥ベスパー首長 OUT):

本作は紛れもなく“UOの”小説である。「設定」と「システム」、あるいは「ゲーム」と「人生」が、これという明瞭な線引きもないまま、マーブル模様に混ざり合う世界。戸惑う読者もいるだろう――しかし、感覚では理解している。UOプレイヤーならば、これが紛れもなく自分たちの世界を描いたものだとわかる。テーマと筋立ては、ブリタニアが最もドラマチックだった時代を彷彿とさせ、物語性の高いエンターテインメントとして構築されている。表現能力も充分にある。本作を選出するにあたって、審査員らの意見は完全に一致した。第一回飛鳥文学賞の大賞として、これほどに相応しい作品が寄せられたことは、まさしく審査員一同望外の喜びである。

 

 

 

 

 


【佳作】Chandra作「KIBAKO NO NAKAMI(木箱の中身)」

詐欺師ウィルバーは、大金をせしめようと、シャード内でも有数の大手ギルドにもぐりこんだ。しかしチャンスがないまま時が過ぎ、いつのまにか副ギルドマスターにまでなってしまった。ある日彼は賭けに出る。新ギルドハウス建設のためと銘打ち、宝くじイベントを提案するのだが・・・。

 

審査員選評(飛鳥ベスパー首長 OUT):

随所に粗削りな面は見受けられるが、本作品もまた、エンターテインメントを目指した意欲的な作品であることは伝わってくる。ここ飛鳥の過去を振り返る時、語らぬ訳にはゆかぬ事件のひとつとして、「詐欺」の存在がある。この物語はその黒い歴史を我々に突きつけながらも、その行為の虚しさをテーマとして描き上げ、我々をトラウマから解き放とうと試みているようにも思われる。よってこの作品もまた、審査員一同から強いプッシュを受けての受賞となった。

 

 

 


【Vesper賞】Kusari-Man作「土地争いの記録」

これはトラメルがまだ存在しない時代の記録である。俺は広い土地の中央に小さい家が建てられているのを見つけた。資金難でタワーを立てられなかったのだろうが、こういうのは早い者勝ち。すかさず近くの土地を確保する。その時からその土地をめぐる俺と隣人との壮絶な死闘が始まった。

 

審査員選評(飛鳥ベスパー首長 OUT):

土地を巡る争いは、どう転んでもサツバツとした話になる。 うまく掠め獲ったこともあっただろうし、勿論、獲られたこともあっただろう。 そんな悲喜こもごもをシニカルな笑いに包みながら、思い出として残してゆく作業は、とても前向きな姿勢だと、ワイはちゃんは思うんですよ。

 

 

 

 

 

 


【Yew賞】Nixie作「place where the sun(陽の当たる場所)」

僕はとても暗い場所で産まれ、おひさますら知らなかった。そんな僕でも知っているのは、今この国には王様がいないこと。混沌が世界を包んでいること。ある日初めて表の世界に出た僕はふたりの女性の会話を耳にした。ひとりは屈強な女性ドーン。もうひとりはシェリーという名の・・・。

 

審査員選評(飛鳥ユー首長 HOLLY-BELL):

みなさんのイメージの中に残っているドーン女王は とても勇敢で、先頭に立って戦いの中みなさんを鼓舞する存在でした。でも、常に戦いに明け暮れていたわけではなくて、こういった穏やかな時間を過ごす中で、つかの間の平穏を感じてほっとされている時間もあったんじゃないかなと想像してみることができたのが、選出の理由となりました。Empath Abbeyの裏手には花に囲まれた女王のお墓があるので、静かに陽の当たる場所で安らかにお過ごしになられていることをお祈りしています。

 

 

 

 

 


【桜Skara Brae賞】HidokuKurai SORA作「SomeStonesStories 2」

Dragon Tamerを目指すMotsugoro-は日々特訓に明け暮れていたが、やがて成長は停滞し、いつしか酒に逃げるようになっていた。そんなMotsugoro-の前に現れたベテランテイマーBIG YOSHIDA。彼はMotsugoro-に賭けを提案する。2羽のchickenのうちどちらがgreater chickenか当ててみろ、と。

 

審査員選評(桜スカラブレイ首長 T):

本作は、大賞受賞作と同一の著者によるものである。じゃあ折角なんだから他の著者の作品を選びなさいよ!被ってんじゃないわよ!気が利かないわねコノ意気地なし!甲斐性なし!抱いて Hold on me!!そのようなご意見もあることだろう。しかし、両作品を読まれた方ならばお分かりになるはずだ。双方の読み味が全く異なることに。磨き、練り上げ、高められた大賞受賞作に対し、ただ熱に浮かされるまま筆を走らせたものが本作と言えよう。全く異なるアプローチ。ときには完成度を捨て、迸るアドレナリンを直接したためたほうが胸を打つこともある。これが著者自身の意図・選択によるものであると、読者諸氏は気付かねばならない。greater であるにしろ、ないにしろ、それが極上の chicken であることに変わりはない。そのことを気付かせてくれた著者に対し、賞Vortexをお見舞いしたくなった。ただ、それだけのことである。

 

 

 

 

 


【森の動物賞】niboshi作「Vesper’s workers & me」

彼女の名はにぼし。べスパーの酒場で飼われていた元ノラ猫だけど、今は人間の姿になって、魔法使いのジェイデンの小屋で魔法修行をしている。このお話は、彼女の目を通してつづられる、べスパーの人々の暮らしの物語。それはごく普通で、穏やかで、かけがえのない日常・・・。

 

審査員選評(森の動物代表 FALF):

この作品で特に好きだったのは、描かれている世界があくまでベスパ―に住む冒険をしない一般人達の日常であったこと。 さらにそれを、人間の姿になった猫、という元から人間として生まれている人間ではない視点で書かれていた所です。 ほのぼのとした、優しい気持ちを思い出せてくれるような素敵な作品をありがとうございました。

 

 

 

 

 

 


【Library Cafe賞】Sawako作「TADA, SOKO ni HIKARU(ただ、そこに光る)」

私はムーンゲート。街や神殿を結ぶ扉。人間やエルフ、ガーゴイルたちは、私たちを通ってそれぞれの旅路に向かいます。でも実は、ムーンゲート同士は会話ができるんです。おしゃべりなゲートや愚痴の多いゲートなど、個性は様々。今日も私たちゲートのおしゃべりがはじまります。

 

審査員選評(Library Cafe司書 Latour):

moongateが主人公という斬新なアイディアにまず驚きました。各moongateの個性が魅力的に書き分けられていますし、 moongateに対する娘さんの態度も、Britannianとして共感できます。 何より、優しさに満ちた世界観が魅力的。 壮大なドラマが描かれているわけでもないのに、 充実した読後感を味わうことができました。 こうした様々な要素を20ページに収めた手腕もお見事です。 20ページ本の無限の可能性を感じました。 Britannia短編小説の未来を拓く作品です。

 

 

 

 


読者賞の行方は?

ここまでの各賞は事前に発表されていましたが、寄せられた210本(!)の感想文をもとに「読者に強烈な印象を残した作品」が選ばれる読者賞は、贈賞式の場で発表されました。私も最終結果までは知らなかったので、動画を拝見しながらドキドキ。納得の4作品が選ばれました。

 

 

 


【読者賞】Hina作「Bookstore Britania(ブリタニア書籍堂~おいしいキャベツの作り方~)」

古びたいい雰囲気の書籍店を見つけた私。この手の店には当たりの本があると直感して扉を開くと、山と積まれた本に囲まれた女性の店員さんがいた。聞けばここの本はすべて彼女が書写したものだという。何かお探しですか、と問いかける店員さんに遠慮しつつ、私が尋ねた本は・・・。

 

【Latour短評】Hinaさんはこれまでドラマチックな出来事を描く作品が多かった作家さんですが、本作はごく普通の日常の一コマを、さりげない筆致で描写し、状況そのものに語らせることで、新境地を開かれました。その静謐な世界観に、魅了された読者が多かったのも納得です。

 

 


【読者賞】TAIYOUJI作「Nujelm Lute Playing」

ニュジエルムのリュート弾きである主人公は、憧れのブリテイン音楽学校に入学するため、ガーゴイル船に乗って出発しますが・・・。主人公の大冒険が、仕掛けいっぱいの絵本でダイナミックに展開されます。特に26~53ページのクジラが躍り上がるアニメーションは圧巻です。

 

【Latour短評】たとえこの本に作者名が書かれていなくても、作者は太陽寺さん以外ありえないでしょう。ブリタニアに動くロボットを建造できるおそるべき才能は、UO本すら動かすことができるのです。「万能の天才」太陽寺さんの伝説に、新たな1ページが加わった作品です。

 

 


【読者賞】mire作「Love Potion」

ニューマジンシアに露店を開いていている薬師の青年のもとには、毎日たくさんのお客さんがやってきます。町の劇場で役者を務める美しいブロンド娘も常連客の一人です。そして二人のやり取りを眺めている人影がひとつ。それは花屋の看板娘でした。はたして彼女の恋の行方は・・・。

 

【Latour短評】おだやかで安心して読める童話です。恋敵になりそうなブロンド娘は優しい女の子ですし、憎まれ役で終わりそうなずるがしこい首長さんすら、幸せになる結末が用意されているという、どこまでも優しい世界。ブリタニア教育省推薦図書に指定したいくらいの作品です。

 

 


【読者賞】Apricot Jam作「Flower Crown Girl(花冠の少女)」

いつものようにラマに乗ってイルシュナーを散歩していると、少女に声をかけられました。聞けば祖父が経営する農場まで行くとのこと。比較的安全とはいえ道を逸れれば危険地帯。どう見ても冒険者のいで立ちではない彼女を放っておけず、農場まで護衛することにしましたが・・・。

 

【Latour短評】第一回飛鳥文学賞応募作家さんの中で、おそらく最も長いキャリアをお持ちのおじゃむさん。本作もベテラン作家の実力が遺憾なく発揮されています。物語をまとめる構成力はさすがの一言。Apricot Jam先生の新作が読めたのも、飛鳥文学賞の成果の1つだと思います。

 

 


飛鳥文学賞を終えて

応募数27作品。寄せられた感想文は210本。作者として、読者として、審査員や裏方として、色々な方がいろいろな形で参加してくださいました。全てのブリタニアンよ、エンターテイナーたれ」という、ロード・ブリティッシュのお言葉を体現するイベントになったと思います。

 

このようなイベントに関わらせていただけたことは、本当に光栄でした。作者の皆さま、読者の皆さま、審査員の皆さまに、そして主催者OUTさんに、心より御礼申し上げます。

 

なお、第一回飛鳥文学賞の応募作品は、Library Cafe Annexの庭に、6月いっぱい展示させていただく予定です。その後は、Library Cafe本館にて、末永く大切に収蔵させていただきます。

 

 

 


今回もお読みいただきありがとうありがとうございました。ぜひ飛鳥シャードの図書館、Library Cafeにいらしてくださいね。また桜シャードの図書館、NewMagincia Petrushka Library、出雲シャードの図書館、Magincia Libraryもよろしくお願いいたします。

 

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Profile

Latour
Latour
Latour(ラトゥール)と申します。みなさんには「ラー」あるいは「司書」と呼んでいただいています。
飛鳥の図書館カフェ「Library Cafe」で司書をしているかたわら、私自身も作家活動も行っています。
本業は「人間も動物も治療できる専業ヒーラー」だったのですが、最近は冒険に出かけることもほとんどなくなり、図書館にこもってばかりいます。
プロフィール画像はPicrewの「こんぺいとう**メーカー」で作成しました。

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