【図書カフェだより】読みやすいレイアウトのために

Library Cafeについて

飛鳥シャードにあるLibrary Cafeは、ウルティマオンラインのプレイヤー作家が書いた本(PC本)やNPC本の収集・公開を行っている図書館カフェです。Library Cafe本館)、Annex(別館)、Neo(新館)の3つの図書館に分けて収蔵されたたくさんの本たちをどなたでも読むことができます。

 

現在の収蔵している4162冊の本たちの詳細は収蔵図書リスト20230115をご覧ください。またSA本の収蔵状況についてはこちらをご覧ください。

 

Library Cafe本館にはルナゲート近くのFreeSpaceAsukaさんからハウス間テレポーターでお越しいただくのが便利です。また本館・別館・新館の各館はテレポーターで相互に結ばれており、簡単に行き来することができます。詳しくはLibrary Cafeへの行き方をご覧ください。

 

Twitterでも本のご寄贈など日々のLibrary Cafeの様子をご紹介しています。あわせてご覧くださいませ。


UO小説はどう書くのが読みやすい?

ギルド#RPGのギルドマスターGrenさんは作家としても活動していらっしゃいます。そんなGrenさんがご自身のブログで「UO小説はどう書くのが読みやすい?」という記事を発表されました。UO作家さんによる文章読本ともいうべき試みは今までにないもので、大変興味深く拝読しました。

 

UO小説はどう書くのが読みやすい?①
UO小説はどう書くのが読みやすい?②
UO小説はどう書くのが読みやすい?③
(いずれもGrenさんのブログ「森の黒熊亭 #Role Playing Guild」に掲載されています)

 

ブリタニアの本(以下UO本)はちょっと癖のある仕様なので、作家さんそれぞれが独自の工夫をされていると思います。そこで今回は、Grenさんの真似をさせていただいて、私Latourが執筆するうえでレイアウトについて気をつけていることをまとめてみたいと思います。

 

もちろんUO本の書き方に正解があるわけではないので、あくまで一例としてお読みいただければ幸いです。

 


はじめに私の作品「A Flower Guardian(花守人)」の冒頭の部分をご覧ください。

 

 

主としてこの文章を例として、私がレイアウトで気をつけていることについて書いてみたいと思います。

 


1ページ目は英語と日本語のタイトルを併記する

UO本の表紙はアルファベットのタイトルしかつけられないので、英語かローマ字のタイトルにせざるを得ません。でも英語だけだとわかりにくいですし、ローマ字も読みづらいです。なので私は表紙のタイトルは英語でつけ、1ページ目を中表紙として英語と日本語を併記することにしています。

 

 

飾り罫線は「本文でない」部分に使う

私は飾り罫線は「本文とは違う部分である」ことを示す記号として使っています。例に挙げた4・5ページは本文ではなく、物語の背景を描くために引用したNPC本の文章です。他にも中表紙(1ページ)や章扉(3ページ)、他作品では回想シーン、異空間のシーンなどでも飾り螺旋を用いています。

 

 

改行の仕方の基準

6、7ページをWordで執筆した文章をそのままUO本にコピー&ペーストすると左図のようになります。文字がつまっていて読みづらい印象を受けるかと思います。そこで読みやすいように所々改行を入れるのですが、私は次の2つを基準として改行しています。

 

①活用語の語幹と活用語尾、送り仮名は改行しない 前の画像の左のページの1行目の「一度だ/け」は「一度/だけ」、3行目の「間借りしたささや/かなものだ」は「間借りした/ささやかなものだ」、8行目「振舞わ/れる料理」は「振舞われる/料理」のように改行の位置を変えています。

 

②名詞は途中で改行しない 「レオン」「ブラックソン」「エクソダス」「ブリタニア」のようなカタカナの名詞も、「信者」「反逆者」「思想」「平和」のような漢字の名詞も、どれも途中での改行を避けるように調整しています。

 

①も②も「言葉の意味のまとまり」を一目で認識していただくことで、読みやすくするための工夫です(こちらの考え方などを参考にしています)。「ブラックソン」のような文字数の多い名詞を調整するのがなかなか大変で、改行の基準を守るために文章そのものを変更することもあります(このことについては後述します)。「ワンダリングヒーラー」のように複数の英単語が組み合わされた長い名詞もなるべく一行に収まるように頑張りますが、どうしても無理な場合は「ワンダリング/ヒーラー」のように英単語単位で改行します。なお、以前は人名やモンスターなどはUOの仕様に合わせて英語表記していましたが、今は読みやすさを優先してカタカナ書きに改めています。

この改行の基準は読みやすいのですが、ページの右端がそろわないので(左図の青い部分)、不格好になるのが難点です。「読みやすさ」と「見た目」のバランスをどう取るかは、ブリタニア作家にとって永遠のテーマのひとつであり、作家の個性が一番出る部分なのかもしれませんね。

 

 

会話文は2行目から1文字下げる

「」でくくられた会話文は、2行目以降は1文字分下げています(左の画像の赤線の部分です)。これは会話文であることを強調するためです。また見た目の煩雑さを避けるため、会話文の最後は読点( 。)を省略します。

 

 

 

難しい漢字はなるべく使わない

9ページ「あいづち(相槌)」、11ページ「よろわれた(鎧われた)」などはひらがな書きをしています。UO本の画面上では画数の多い漢字は読みづらいからです。でも改行に比べて厳密な基準ではなく、物語の雰囲気に合わせてある程度変えています。童話っぽい物語ほど漢字を避けてひらがなが多めになります。

 

 


以上が、UO本に書かれた文章を読みやすくするために私が気をつけている工夫です。またこれらに加えて、レイアウトについて次のようなマイルールも課しています。これらはちょっと特殊なルールなので参考にならないかもしれませんが、ご紹介しますね。

 

奇数ページは( 。)か(  」)で終える

奇数ページ、つまり見開き2ページの右側のページは、文章の最後を示す読点( 。)か会話文の最後を示すカギかっこ閉じ( 」)で終わらせます。これは「クリックしてページをめくる」という仕様を意識したものです。あせってページをめくって最後のページまで飛んでしまうことってありませんか?

 

見開き2ページで文章に区切りをつけるのは、そこで一息入れて、なるべくあせらずにページをめくっていただくための工夫です。とはいえすべての奇数ページを( 。)か( 」)で終わらせるための調整はなかなか大変で、特に200ページの「花守人」は本全体がパズルのようでした。

 

一冊ぴったりに収める

20ページ本なら20ページぴったり、40ページ本、100ページ本、200ページ本もぴったり最後のページで物語を完結させています。ページを余らせたり、2冊以上にわたって物語を続けることはありません。このルールを守るために物語全体を修正することもあります(左は「ペットの幽霊捜索隊」の最後です)。

 

一冊ぴったりに収める理由のひとつには「本の見た目と内容の長さを一致させるため」です。私たちはリアルの世界では本の厚さで内容の長さを推し量ることができますが、UO本の場合、200ページ本に書かれていても数ページで終わる場合もありますし、逆に見た目は20ページ本なのに100ページ以上ある場合もあります(200ページ本の原本を20ページ本に書写した時などです)。これはUO本の(そしてブリタニア文学の)味でもあるのですが、違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。私は本の見た目と内容の長さを一致させることで、その物語がどれくらいの長さなのか、あらかじめ読者に知っていただけるようにしています。

でもこれはあまり大きな理由ではありません(中表紙などに「全○○ページ」と書けば済むことですし)。実は次に挙げるもうひとつの理由の方が大きいです。

 

「縛り」が作者の想像を超えた展開を生む

「改行の仕方」「奇数ページで文章を終える」「一冊ぴったり」など、レイアウトに関するルールを守って物語を書くのはかなり大変です。さらに私は物語の内容についても「UOならではのお話」「ハッピーエンド」というルールがあるので、「縛り」はますますきつくなります。

 

でもこれらの「縛り」を課して四苦八苦しながら執筆することで、当初は思いもしなかった展開になったり、作者自身がびっくりするようなトリックやオチが生まれたりします。この「作者自身の想像を超える」という感覚は、私にとって物語を創作する醍醐味のひとつになっています。また「縛り」を守るために何度も推敲を繰り返すことで、余分な要素が削がれていき、物語の純度が高まっていくように感じています。
でも、推敲や校閲などには非常に時間がかかります。私がかなり遅筆なのはそのせいです・・・。

 

いかがでしたでしょうか。他のブリタニア作家の皆さんも、どんなことを考えて執筆していらっしゃるのが、機会があったら教えてくださいね。なお、今回例として挙げた「A Flower Guardian~花守人」は、Library Cafe本館1階のベンダーで販売中です。続きが気になる方はぜひお読みいただけたら幸いです。

 

 

 


今回もお読みいただきありがとうありがとうございました。ぜひ飛鳥の図書館Library Cafeにいらしてくださいね。また桜の図書館NewMagincia Petrushka Library、出雲の図書館Magincia Library、大和の図書館bibliomania瑞穂の図書館Jhelom Tactics Libraryをよろしくお願いいたします。

 

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Profile

Latour
Latour
Latour(ラトゥール)と申します。みなさんには「ラー」あるいは「司書」と呼んでいただいています。
飛鳥の図書館カフェ「Library Cafe」で司書をしているかたわら、私自身も作家活動も行っています。
本業は「人間も動物も治療できる専業ヒーラー」だったのですが、最近は冒険に出かけることもほとんどなくなり、図書館にこもってばかりいます。
プロフィール画像はPicrewの「こんぺいとう**メーカー」で作成しました。



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