「ソーサリアの軌跡」で読むブリタニア年代史②

Library Cafeについて

飛鳥シャードにあるLibrary Cafeは、Ultima Onlineの作家さんが書いた本(PC本)を中心に収集・公開を行っている図書館カフェです。本館にはPC本を、すぐ南東にある別館にはNPC本を、合計1112冊の本を収蔵しております。現在の収蔵図書の詳細は最新の記事をご覧ください。

 

Library Cafeへの行き方はこちらをご覧くださいませ(Library Cafe Annexへの行き方も追記しました)。

 


今回は2002年(ブリタニア歴314年)のソーサリアの軌跡をご紹介いたします。ここではエクソダスとロード・ブラックソンによるブリタニア侵略について書かれていますが、その記述はかなり簡潔です。そこで何冊かのNPC本を手掛かりにしながら、この大事件を探ってみたいと思います。

 

なお、ソーサリアの軌跡とNPC本、公式イベントで入手できた本の画像についてはこちらのガイドラインに則ったうえで掲載させていただきます。プレーヤーによるNPC本の翻訳は私のものをのぞいて画像の掲載を控えさせていただきます。

 

記録官マラキ作「ソーサリアの軌跡 2002(ブリタニア歴314年)」

モンデインとミナクスの「子」エクソダスは、ジュカ族、ガーゴイル族、そしてロード・ブラックソンとその軍勢を支配下に置き、ブリタニアに侵略します。最終的にエクソダスの勢力は敗退しますが、ブリタニアに大きな傷跡を残しました。

 

2002年発売の拡張パッケージ『ブラックソンの復讐』に関連するエピソードです。エクソダスに取り込まれブリタニア侵略の手先となったこのロード・ブラックソンは、実は偽物だったことが現在ではわかっています。

 


でもエクソダスがロード・ブラックソンに目をつけたことや、多くのブリタニアンが彼の偽物に「だまされた」のには理由があるはずです。まずはその背景となるロード・ブラックソンの思想を探ってみましょう。

 

Lord Blackthorn作(Latour訳)「A Politic Call to Anarchy(束縛からの自由への思慮深き呼びかけ)」

以前もご紹介したロード・ブラックソンの著作です。単一の価値を押しつけるのではなく、各個人それぞれが信念を持ち、多様性を尊重することの重要性を説いています。その中で、八徳原理を「押しつける」ロード・ブリティッシュを、慎重な筆致ではありますがはっきりと批判しています。

 

なおAnarchy(アナーキー)は「統治者の不在」や「無政府状態」と訳されることが多い言葉ですが、後述のようにロード・ブラックソンは統治や政府の存在を否定しているわけではないので、論旨を汲みとって「束縛からの自由」と訳しました。

 

Lord Blackthorn作(Trilobita訳)「On the Diversity of Our Land(我々の世界の多様性について) 

多様性を重んじる思想がさらに展開され、オークやリザードマンといった異種族にも偏見を抱かずに接すべきであると論じています。その論拠としてNPC本である「The Wild Girl of the Forest (森の野蛮な少女)」と「The Burning of Trinsic(トリンシック炎上) 」が引用されています。

 

ロード・ブラックソンの思想はけっして過激なものではありません。唯一絶対の価値ではなく多様性を尊重する態度は、むしろ私たちの耳になじみやすいかもしれません。しかしロード・ブリティッシュへの批判や異種族への共感が、のちにエクソダスに利用される原因となったこともまた否めないでしょう。

 


エクソダスはブリタニア侵攻に先立ち、様々な権謀術数をめぐらせていました。続いては『ブラックソンの復讐』発売前に展開された8 weeks eventsに関する本をご紹介いたします。

 

Fropoz作「Journal」

エクソダスはサベージ族を扇動してオークたちと戦わせ、ブリタニアを大混乱に陥れました。サベージ・オーク両陣営の戦いに人間も加勢し、シャードによって勝利した陣営が違ったそうです。しかしこれはエクソダスの真の目的から目をそらすための陽動に過ぎなかったのです。

 

Velis 作「Translated Gargoyle Journal」

エクソダス勢に拘束され「再教育」される直前に記された、あるガーゴイルの手記です。ガーゴイルたちは最初からエクソダスの手勢だったわけではなかったんですね。ガーゴイルが単なるモンスターだと考えられていた当時において、彼らが知性を持つ種族であることを示す文献です。

 

 


様々な陰謀をめぐらすエクソダスでしたが、ブリタニアに侵略するためにはどうしても人間の「味方」が必要でした。そこでロード・ブラックソンを「誘拐」し、彼を味方に誘い入れようとします。この時ロード・ブラックソンはどのように応じたのでしょうか。それがうかがえる資料が、のちの時代に発見された「朽ちた日誌」です。

 

Load Blackthorn作「A Weathered Journal(朽ちた日誌)」

ブリタニア歴314年当時に書かれたと思われる、ロード・ブラックソンの日誌です。発見されたのはブリタニア歴364年(西暦2012年)ですから、じつに50年間眠っていたことになります。当時のロード・ブラックソンの真意が記されています。

 

この日誌は(おそらく意図的に)わかりづらく書いてありますが、おおむね以下のことを読み取ることができます。

・ロード・ブリティッシュ不在の今、国の安定のため自分が王位に就くべきであること

・にもかかわらず、自分を王位に就かせようとしない王国上層部にいら立っていること

・邪悪なエクソダスが「ブリタニアを征服して統治すべきだ」ともちかけてきたこと

・エクソダスの野望をくじくためにあえて「だまされたふり」をする決意を固めたこと

・そのために高度かつ極めて危険な魔法を使うことにしたこと

これらから推測すると、どうやらエクソダスはロード・ブラックソンの思想や不満を利用して仲間に引き入れようとしたようです。それに踊らされるロード・ブラックソンではありませんでしたが、エクソダスは強大であり、また彼には相談できる仲間もいません。そこで彼は魔法によって自分の精巧な偽物を作り出し、その偽物がエクソダスと組んでブリタニアを「侵略」しつつ、あえて敗北することでブリタニアを守ろうとしたのだと思われます。

ブリタニアを守るため、エクソダスだけでなくブリタニアの人々までもあざむく覚悟を決めたロード・ブラックソン。そこからうかがえるのは、高潔で責任感が強い、けれども孤独な人物像です。

 


ロード・ブラックソン(の偽物)はエクソダスと手を組み、半分機械化された奇怪な存在に姿を変えます。そしてジュカ族やガーゴイル族、自らの軍勢を率いてブリタニアへの「侵略」を開始しました。その時の檄文が残っています。

 

Load Blackthorn作(Trilobita訳)「A Welcome(歓迎)」

ロード・ブリティッシュは秩序の名の下にブリタニアの思想を統制し監視してきた。そうした圧政から人々を開放するために、エクソダスは私に力を与えた。私は売国奴ではなく解放者なのだ。圧政に反対する者よ、自由を愛する者よ、エクソダスの軍旗のもとに集え。我々は君を歓迎する!

 

偽物の手による偽書ですが、そこで展開される思想は先述した「本物の」ロード・ブラックソンに沿ったものになっています。多くのブリタニアンが(そしてエクソダスさえも)だまされたのも無理ありません。

 

Kabur作「Journal」

こちらはエクソダスの手先Kaburが残した日誌です。Kaburはジュカ族を率いてミーア族と戦っていますが、戦果が思うようにあがらないことに焦っているようです。そしてエクソダスのそばに立っているロード・ブラックソン(の偽物)の姿も描写されています。

 

 

ブリタニア全土、そしてイルシェナーも巻き込んだ戦争は、最終的にはブリタニア側の勝利に終わります。ロード・ブラックソン(の偽物)は打倒され、エクソダスはいずこかへと姿を消しました。それは「本物の」ロード・ブラックソンが描いたとおりの筋書きだったように思います。しかし同時に、彼自身が反逆者の烙印を押されることも意味していました。

彼の汚名が晴らされるのは、ずっとずっと後のことになります。

 


いかがでしたでしょうか。今回はソーサリアの軌跡を中心に、NPC本を引用しつつ歴史的事件を描写してみました。なお今回引用した文献は、いずれもLibrary Cafe Neo新館の以下の書架に収蔵しております。ご興味があったらぜひ読んでみてくださいね。

 

「58:NPC本(翻訳・対訳)①」 の書架

・Horace the Trader作(Trilobita訳)「The Wild Girl of the Forest(森の野蛮な少女)」★

・Japheth of Trinsic作(Trilobita訳)「 The Burning of Trinsic(トリンシック炎上)」★

・Lord Blackthorn作(Latour訳)「A Politic Call to Anarchy(束縛からの自由への思慮深き呼びかけ)」

・Load Blackthorn作(Trilobita訳)「A Welcome」★

・Lord Blackthorn作(Trilobita訳)「On the Diversity of Our Land(我々の世界の多様性について) 」★

※★印はTrilobitaさん以外の翻訳もあります。またこれらの英語原著は「A02. NPC本(英語)」に収蔵されています。

「60:公式イベント」の書架

・Fropoz作「Journal」

・Kabur作「Journal」

・Velis 作「Translated Gargoyle Journal」

「61:ソーサリアの軌跡」の書架

・記録官マラキ作「ソーサリアの軌跡 2002(ブリタニア歴314年)」

 


今回もお読みいただきありがとうありがとうございました。ぜひ飛鳥シャードの図書館、Library Cafeにいらしてくださいね。また桜シャードの図書館、NewMagincia Petrushka Library、出雲シャードの図書館、Magincia Libraryもよろしくお願いいたします。

 

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Profile

Latour
Latour
Latour(ラトゥール)と申します。みなさんには「ラー」あるいは「司書」と呼んでいただいています。
飛鳥の図書館カフェ「Library Cafe」で司書をしているかたわら、私自身も作家活動も行っています。
本業は「人間も動物も治療できる専業ヒーラー」だったのですが、最近は冒険に出かけることもほとんどなくなり、図書館にこもってばかりいます。
プロフィール画像はPicrewの「こんぺいとう**メーカー」で作成しました。

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